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中小企業のBCP

中小企業のBCPの作り方

テンプレートを活用財務戦略問題

中小企業でBCPを作成する場合、リスクマネジメント専門部門は無いでしょうから、総務部長相当の方が中心になるケースが多いと思います。専門書を読んで一から勉強するのも良いですが、各種中小企業支援機関が出しているBCPテンプレート(ひな形)を活用しましょう。これらのテンプレートには、BCPで作成する文書(例:従業員連絡リスト、供給品目・供給業者情報など)のテンプレートに加え、BCPのガイドライン(テキスト)も付いていますのでこれ一冊で十分でしょう。 ネットですぐに検索できます。
 

中小企業庁 BCP策定運用指針(入門・基本・中級・上級各コース有り)
東京商工会議所 BCP策定ガイド


業界テンプレートの例

国土交通省関東地方整備局 建設会社における災害時の事業継続力認定の申請に向けた準備書
全日本トラック協会 中小トラック運送会社のためのリスク対策ガイドブック

身の丈に合ったBCPを作る

BCPの専門書やテキストを読むと、BCPを作るのはずいぶん難しいと感じるかもしれません。中核事業をどうやって選定したら良いのか、目標復旧時間(RTO)をどうやって決めたら良いのか・・・。


確かに事業が多岐・広範にわたっている大企業の場合は、この作業は煩雑で時間がかかります。でもほとんどの中小企業においては事業はシンプルですから社長の感覚で中核事業は「この仕事」「この顧客対応」と決めてしまってかまわないのです。目標復旧時間も、手持資金を前提に売上=ゼロとして支払予定を考えれば、いつまでに事業を再開して収入を得る必要があるのかおのずと決まります。


高度なBCPを目指す必要はありません。まず最初は「無いよりははるかにマシ」くらいの気持ちで身の丈に合ったBCPに取組みましょう。




COLUMN

極端な例かもしれませんが,街のレストランのBCPだって作れます。
大地震があって,店舗施設は安全が確認できたが,電気・ガス・水道は止まっているとしましょう。 周囲は家で食事が作れない家庭ばかりです。
この場合中核事業とは,常時ストックされていて常温で保存されている食材を使い,弱い火力でも手早く作れるメニューを,毎日1~2種類だけ提供することです。

このために必要なものは,カセットボンベとバーベキューコンロ,洗わなくていい紙皿・紙コップを備蓄しておくだけです。
これを継続するために,食材や備蓄品の補充先を複数リストアップしておきます。
カット絵 ご主人が怪我をして調理が困難だったり,手が足りない場合を想定して,過去に働いていた人の連絡リストも作っておくと良いでしょう。
いざという時はのれん分けした老舗企業のように助けにきてくれるかもしれません。また無理をして無料で提供する必要はありません。F/Lコスト(飲食店の食材費(Food)と人件費(Labor))が回収できればよしと考えれば,通常価格の6割くらいで出せば良いことになります。とにかく売上を上げることによってキャッシュフローを確保し,事業継続サイクルを回すことができます。
周辺の復旧が終えたのち,このレストランは地震直後から地域住民に暖かい食事を提供し続けた店として,地域との絆が深まることでしょう。

これだけのことを考え準備しノートに記録しておくだけでも,このレストランにとっては立派なBCPです。
人と時間とお金をかけて緻密な計画書を作るのは大企業に任せ,中小企業・小規模企業は自分の身の丈に合ったBCPを作れば良いのです。



教育・訓練・見直し

BCPが完成したら従業員に説明する機会を設けましょう。
全員にBCPの全てを時間をかけて説明する必要はありません。
中核事業の復旧を担当する従業員は全てを理解してもらい、その他の従業員は緊急対応部分を中心に説明すれば良いでしょう。


BCPはあくまでも文書としての計画ですから、定期的に計画に基づく訓練を実施し、計画の問題点があればBCPを見直し修正します。
訓練も自社の身の丈に合った範囲・やり方で無理せずに行いましょう。
例えば安否報告確認訓練は年1回実際に行い、その他の部分は図上訓練(ワークショップ型の机上シミュレーション)で行う方法もあります。


事業も外部環境も少しずつ変わっていきますから、最初に作ったBCPがいつまでも正しいとは限りません。訓練・問題点の発見・修正・BCPの更新のPDCAサイクルで、災害による事業の突然のシャットダウンに備え、再起動できる、事業継続力の高い企業になりましょう。

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